第三章 繰り返される歴史への一穴

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「約束の半分だが、魔力を注いだ。魔力で構成されていない()の修理は必要だが、それでも我が国に向かう分程度には苦労しないだろう」 「何を勝手に決めている。吾はとは言っていない」  立ち上がり、体の土埃を落とす。動きはぎこちないが、スクヴィラの魔力は生前にかなり近い状態を保っていた。 「ならば、余の代わりに勝ったと口を開くか? 余としては一向に構わないが………ふむ、その表情ではその気はないらしい」 「煩い。勝手に吾の意を語るでない」  そう言い終えると、スクヴィラと大魔王は相田達へと視線を向ける。  彼の能力は回復魔法を殆ど受け付けない。ケリケラはコルティの魔法を倍加させる魔法陣を展開させ続けて治療にあたっている。本来ならば瀕死の重傷でも飛び起きれる程の威力なのだろうが、それでも相田の傷が元に戻る気配すら見えない。  スクヴィラが、ふんと鼻を鳴らす。 「魔法だけに頼るからそうなる………視野の狭い奴らよ」  仕方がない、とスクヴィラは泣き止み始めたキエフに声をかける。 「えっ、でもスクヴィラ、僕にはそんな知識はっ!」  案を聞かされた彼は驚くが、当のスクヴィラが問題ないと肩をすくめた。 「心配には及ばん。指示は吾が出す、貴様は言われた通りに糸を動かせばよい………それとも、吾を恩も返せない無能な娘だと言わせる気か?」  その一言に、キエフは大きく息を飲み込み、そして頷いて見せた。 「よろしい。ならば、さっさと済ませてしまおう。今なら恩に利息は付かないはずだ」  次に大魔王を見上げ、不敵に笑う。 「貴様もついて来い。まぁ、拳の一発は覚悟しておくんだな」 「みなまで言うな。余にもその程度の意図は読めるようになったつもりだ。貴様の言う通り、一発は我慢してやろう」
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