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相田が震える右腕を上げた。
「ど、どうやら今度も俺の勝ちのようだな。はっはっはぁぁ………はぁ」
吐いた息に合わせるように、重力に負けた腕がだらりと落下する。
「ふん。馬鹿な事を言う。そもそも先に目を覚ましたのは吾ぞ? 古の魔王たる吾の慈悲と情けがなければ、今頃貴様は失血死しておったわ」
ふんぞと鼻息を荒くして腕を組んだスクヴィラだったが、それと同時に体から一際大きな音を立てる。
「「あ」」
相田とスクヴィラの視線と声が揃う。
「貴様は今、何も見ていない。故に吾の勝ちは揺るがない」
「馬鹿言うなって。今、めちゃくちゃ大切っぽい大きな歯車が転がっていっただろうが?」
「貴様は出血によって意識が混濁している。残念だがそのような事実はない」
子どもの喧嘩が始まった。
「ご主人様。スクヴィラ様は魔力でご主人様の出血していた場所に栓をしてくれたのです。その間にキエフさんが傷口を縫い、止血と縫合をしてくれたのです。余り恩を返すのが遅くなると、利子が付くと聞きます」
回復魔法を受け付けない相田でも、止血や縫合といった治癒ではない処置であれば効果があった。これまで薬草などの効果による回復に頼っていただけに、今回の事実は大きな情報だった。
「スクヴィラ様。我が主に代わり、御礼を申し上げます」「お父さんを助けてくれて、ありがとうございます」
「うむ。魔法は確かに便利だが、時には非効率な技術も役に立つ。便利な物ばかりに頼るなという先人の知恵だと思い、よくよく学ぶといい」
頭を深々と下げるコルティとケリケラに、スクヴィラは王として一定の満足を得る。
「相田よ。貴様の臣達は、この状況をよく理解している。その主たる貴様が、その範とならずして、どうして王を名乗ることが出来よう」
「くっ!」
相田の表情が歪む。
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