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「こらこら。スクヴィラ、そこまでにしておきなさい」
「むむ………」
キエフの手がスクヴィラの頭に乗せられ、会話が強制的に打ち切られた。
「椅子が………声を出すでない」
「椅子じゃありません。お父さんです」「ぐっ」
今度はスクヴィラが相田と同じ表情に変わる。
「ふっふっふ、スクヴィラよ。お前の父親は、この状況をよく理解している。その娘のお前が、それに従わずして、どうして王を名乗ることが出来ようか、いやない」
してやったりの、しかし引きつった顔で相田が笑みを作る。
「煩い。人の言葉を勝手に使うな。そもそも、そこに王は関係ないだろう」
お互いに満身創痍、動けない体。ついには言いたいことを言い終えてしまい、2人の間にしばしの沈黙が流れた。
「もう、気は済んだのか?」
いつの間にか相田の傍に黒ずくめの男、大魔王が立っていた。
相田が視線を送り、顔の中心にしわを集める。本来ならば、すぐにでも掴みかかりそうな感情を発している事は誰の目にも明らかだったが、残念ながら体の自由が利かず、震える手を僅かに上げるに留まっていた。
「そうか………またお前の仕業か」
「そうとも言える」
大魔王は隠すことなく即答する。
「お前はいつもそうだ………自分だけが全てを知っているかのように、気が付けば俺の知らない間に、全てを決めようと、仕組んでくる。その度に多くの者達が迷惑をこうむってきた。誰かの生死に関わる事も一度や二度じゃなかった」
掠れた声。しかしその声には、必死の訴えが込められていた。これまで幾度となく繰り返されてきたであろう流れに、相田は常に選択を強要され、時には勝手に事が進むことを許容しなければならなかった。
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