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風向きが変わり、生暖かさが混ざった空気が相田達を撫で始める。コルティやケリケラ、そしてスクヴィラも彼の視線の意味に気付き、同じ方向を向く。
「スクヴィラ?」
相田と同様に、事の変化に気付けていないキエフが首を傾げた。
スクヴィラが鼻を鳴らし、ぎこちなく立ち上がる。
「時間をかけ過ぎたか」
「はい。数は五百に満ちませんが、魔力の総量はその数倍………少なくとも王国騎士団の増援ではありません」
相田の介抱で座ったままのコルティの視線に気付き、ケリケラが空高く舞い上がっていく。
彼女達の話を聞き並べ、ようやく相田も状況に追いついた。
「………会社か」
「恐らく」
コルティが頷いて肯定する。同時にケリケラが簡単な偵察を終え、王国騎士団の旗を掲げた騎士団の姿を報告してくる。
「恐らくは、騎士団に扮して周辺地域を平定し、その後は裏から支配するつもりなのでしょう」
「それと、魔王軍の排除、か」
魔王軍が会社の存在を許さないように、彼らもまた相田達の存在を疎ましく感じていた。今回の件だけでなく、既に会社の幹部を倒し、彼らの企画を幾度と潰してきただけに、彼らは介入の機会を待っていたのである。
「奴らとしては、絶好の機会と見えたのだろう。何せ、吾も貴様もこの状態の上、守護すべき家臣もほとんど残っておらぬからな」
スクヴィラが他人事のように頬を吊り上げてほくそ笑むが、その小さな体からはさらに1つの歯車が落下する。
「さて、この状況、どうする?」
戦うか、逃げるかの二択しか存在しないにもかかわらず、スクヴィラは相田に判断を委ねた。
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