第三章 繰り返される歴史への一穴

9/11
前へ
/410ページ
次へ
 風向きが変わり、生暖かさが混ざった空気が相田達を撫で始める。コルティやケリケラ、そしてスクヴィラも彼の視線の意味に気付き、同じ方向を向く。 「スクヴィラ?」  相田と同様に、事の変化に気付けていないキエフが首を傾げた。  スクヴィラが鼻を鳴らし、ぎこちなく立ち上がる。 「時間をかけ過ぎたか」 「はい。数は五百に満ちませんが、魔力の総量はその数倍………少なくとも王国騎士団の増援ではありません」  相田の介抱で座ったままのコルティの視線に気付き、ケリケラが空高く舞い上がっていく。  彼女達の話を聞き並べ、ようやく相田も状況に追いついた。 「………会社(カンパニー)か」 「恐らく」  コルティが頷いて肯定する。同時にケリケラが簡単な偵察を終え、王国騎士団の旗を掲げた騎士団の姿を報告してくる。 「恐らくは、騎士団に扮して周辺地域を平定し、その後は裏から支配するつもりなのでしょう」 「それと、魔王軍(俺達)の排除、か」  魔王軍が会社(カンパニー)の存在を許さないように、彼らもまた相田達の存在を疎ましく感じていた。今回の件だけでなく、既に会社(カンパニー)の幹部を倒し、彼らの企画を幾度と潰してきただけに、彼らは介入の機会を待っていたのである。 「奴らとしては、絶好の機会と見えたのだろう。何せ、吾も貴様もこの状態の上、守護すべき家臣もほとんど残っておらぬからな」  スクヴィラが他人事のように頬を吊り上げてほくそ笑むが、その小さな体からはさらに1つの歯車が落下する。 「さて、この状況、どうする?」  戦うか、逃げるかの二択しか存在しないにもかかわらず、スクヴィラは相田に判断を委ねた。
/410ページ

最初のコメントを投稿しよう!

258人が本棚に入れています
本棚に追加