第三章 繰り返される歴史への一穴

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「吾らは、ここより東の地へと向かう。案内はそこの相田(ポンコツ)がするのでな。まぁ、それなりに扱ってやれ」 「畏まりました。父………いえ、シュタイン殿の使いから、街の郊外に馬車を1台隠してあると言伝を貰っています。それに乗り、ここから急ぎ離れる事にしましょう」  ボルドーは短く同士達に指示を伝えると、動けない相田を1人のオークが背負った。キエフも自分が娘を背負うと主張したが、少しでも早く移動するためだとボルドーに説得され、渋々その役を交代させられる。 「では、参りましょう」   ボルドーを先頭に、2人の魔王が亜人達に担がれながら東へと向かう。 「………待て」 スクヴィラが彼らの足を止めさせた。そして体を半身程振り返させると、殿を請け負った大魔王、そしてその左右に立つ2人の姿を、ボルドーの背中から一瞥する。 「吾が言う義務はないのだが………本当に良いのか? 貴様らの主人の目が覚めた時………奴がどうなるかまでは責任はもてんぞ?」  コルティとケリケラ。相田が最も信頼し、仲間以上の感情を持ち合う2人が静かに頭を下げた。  そして、何も言わなかった。 「………ふん」  スクヴィラが鼻を小さく鳴らし、再び正面を向いて進み始めた。横目では相田が目を半分ほど開けているが、彼は記憶が混濁しかけており、恐らく状況を正しく判断できていないだろうと彼女は予測する。仮に彼の意識が明確ならば、感情的になった挙句、2人の決意を無にするかのように、全力で否定から入るに違いない。  スクヴィラは、頭を下げ続ける2人を背中で見送った。
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