第四章 東の最果て

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 そもそも、あの平原が数十年前、2人の喧嘩によって作り出された跡とは、当時を知る者以外にとって冗談にしか聞こえないだろう。スクヴィラは、怒りの矛先となる男があの開発区の中心にいると信じ、睨みを利かせた。  背筋の一本でも冷えてくれれば面白い。そうスクヴィラは鼻を鳴らし、歩みを再開させる。  そして、ボルドーが脇に抱える書類の束に目を向けた。 「それを寄越すがよい。どうせ、執務室(部屋)に着いてから仰々しく見せつけるよう吾に渡すのだろう? 時間が惜しい、目を通しながら向かう」 「しかし、魔王様………その、歩きながらというのも」  品がない。最後まで言わなかったが、彼の言葉にはその意が含まれていた。  昔と比べ、形式を意識する発言が多くなったとスクヴィラが横目で睨む。父親に似てきたその姿勢は決して悪くないが、今の彼女の気分にとっては、残念ながら逆効果だった。 「それを、寄越すがよい………ボルドー?」  スクヴィラは足を止めてから彼をもう一度睨むと、ボルドーは顔を天井に反らすように引き、息を詰まらせる。そして彼が諦めて伸ばした手にある書類の束を、スクヴィラは半ば強引に奪い取った。 「第一、この城が広すぎるのだ」  書類の中心を指で払い、軽い音を立てる。決して彼の言動を否定した訳ではない、彼女は自分の行動にその意味をもたせた。  執務室(部屋)に向かうまでの5分。スクヴィラは束の半分に目を通し、その7割に承認の魔力印を書き込み、残りの3割に要点のみ注文を付けて、ボルドーに突き返した。 「まったく………何もかも奴のせいだ」
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