終焉ワッフル

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 彼女からメッセージが届いたのは、時計の針が午前十時十五分を指した頃だった。 『どうしても今、文くんに会いたい。あと二時間で会えるけれど、あと二時間も待ちたくない。ごめんなさい』  そのメッセージの奥深くにある含みが何を意味しているのか、文彦には分からなかった。 けれどとにかく、彼女が強く自分に会いたがっているということだけはしっかりと伝わった。  文彦は軽く水を飲んで、財布とスマホと、それからワッフルだけを持って、部屋着のまま家を飛び出した。  予め買っておいた誕生日プレゼントを机の上に忘れてきたことに、少ししてから気付いたけれど、それはまた今度渡すことにした。  彼女の待つアパートまでの最短距離を、彼は息を切らせて走った。 何度も通っていたし、それほど遠くもなかった。  車で行くことも出来たが、道が狭く、ぶつけたり擦ったりして、かえって到着が遅くなったりすることから、彼女の家に行く時は徒歩が多かった。  走るリズムに合わせて、ワッフルががたごとと音を立てて揺れた。 形が多少崩れるぐらいなら、彼女は気にしない。  厚美の部屋はアパートの一階にある。 もう二度と衝動的な飛び降りをしないように、一階を選んだのだろうか。  文彦にはどうしても、それを聞く気にはなれなかった。  扉をノックすると、涙で目を赤く腫らした厚美が出てきた。 「ごめんね。ありがとう、来てくれて」  声が震えていた。 「大丈夫、おれも早く会いたいと思ってた」
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