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深夜、静寂を纏った地下倉庫。そこが依頼主と会う場所だった。
俺の背後から依頼主の声が聞こえた。
「本日もここに来て頂いてありがたいです」
俺は振り返り、依頼主に鋭い視線を向けた。
「今回の獲物は何だ」
俺は暗い倉庫で闇に溶け込むような全身黒色の服を着ていた。仕事以外ではできるだけ光を浴びないことにする。それが業界で生き残るための俺が決めた流儀だった。
ゆっくりとジャケットからスルメを取り出した。これでもかと思うほど、強く噛み締める。
自分のごつごつした体格が忌まわしかった。この体格のせいで業界では俺のことを避けている人間もいるようだ。だが、仕事に関しては真逆で繊細に仕上げる姿勢を貫いていた。
依頼主から写真を見せられて、俺は眉をひそめた。
「ピントがほとんど合ってないが、これが今回の獲物か。特徴は?」
「威勢がよくて用心深い奴です。出現場所もおおよそですが把握しております」
依頼主は自分の言葉に満足そうだったが、俺は肩を落とした。
「威勢がよくて用心深いのは、この業界では特徴にならないな。出現場所と時間帯を教えろ」
依頼主が少し下を向いて、鞄から資料を取り出して伝える。
「おっしゃる通りで。お伝え致します」
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