4人が本棚に入れています
本棚に追加
『1』
「ひっ……!や、やめろっ!やめてくれ!!」
突如現れた刺客に男は子供の様に泣き叫びながら命乞いをした。現れた刺客は泣き叫ぶ男の額にコルトパイソンの銃口を突き付け言った。
「死にたくなければさっさと言え。ヤツはどこにいる?」
「ヤツって誰なんだよ!?検討もつかねぇよ!」
男は首を横に振り、泣きながら訴える。
「検討もつかない…か。なら俺の顔に見覚えはないか?」
刺客の男はそう言うと、被っていた目出し帽を取った。
「あ……あんたは…?」
「あっ…やっぱり顔じゃすぐ分からねぇか」
「だっ、誰なんだよ!?」
「神谷 旬……って言えば分かるか?」
男は視線を一度足元へ下げ考えた。可能な限り頭をフルに回転させ記憶を呼び起こす。
「あっ…!」
男の流していた涙が止まった。
「思い出したか?」
「あんた、捕まってたんじゃ…!?」
「あー、そうか。出所した事は報道してないのか…あの逮捕の日からもう3年か?わりとすぐに出れたんだよ俺。そりゃあー大変だったよ。だって事実をねじ曲げて無罪を勝ち取るんだもん。いやー思い返しても大変だった」
「無罪?事実をねじ曲げた?たしか大量殺人だったよな…そんなはずはっ…」
「世の中ってそんなもんだ。理不尽な事なんていくらでもまかり通るんだよ。ただまかり通すには力が必要だがな」
「ちから?」
「そう。権力、金、人脈……上げたらきりがないけどな。この業界なら特に必要な力だ。お前もそれが欲しいからこのご時世でしみったれたヤクザなんかやってんだろ?」
「さっきから黙って聞いてりゃ…ヤクザなめんじゃねぇぞ!」
「おいおい、急にいきがんじゃねぇよ。状況は何一つ変わっちゃねーよ」
神谷はコルトの銃口を男の額にさらに押し込む。
「くっ!!」
「さて、話を戻そうか。それで?ヤツはどこにいる?俺の正体が分かったんだから察しはつくだろ?」
「もしかして中野さん…か?」
「そうだ。あいつが俺をハメた。ヤツはどこにいる?」
「あの人の足取りは誰も知らねーよ。もし知ってたとしても俺にそれは言えねーよ」
男が言い終わると同時に、神谷は男の脳天をコルトで殴打した。宙に男の血しぶきが舞い、男は悶絶しながら倒れ込む。
「あああぁっ…!」
「俺も暇じゃねぇんだわ。さっさと答えろや」
「はぁ…はぁ…だっ、だから!知らねぇーって!」
「同じ事を言わせるなよ」
男は本当に殺されると悟った。それほどに神谷の目はマジだった。
「分かったよ!!言えばいいんだろっ!?中野さんは京都にいるよ!場所までは知らねーけど先月から京都にいる!」
神谷は男の額から銃口を外した。
「京都か…それはたしかなのか?」
「たしかだ!組の情報筋からのネタだからな。間違いはない」
「それなら早速京都に向かうか。もし違ったら……その時は覚悟しておけよ?」
「分かってるよそんなこたぁ!それよりこの事は誰にも口外すんじゃねぇぞ」
「ああ、大丈夫。口外はしない」
「じゃあ早く俺を解放してくれ!」
男は神谷に懇願する。
「いや、解放もなにも拘束してる訳じゃないんだから。さっさと消えろ」
神谷が答えると男は神谷ににらみを利かせ、そそくさとその場を後にしようと立ち上がった。
そして男が小走りでその場を後にしようとしたその時。
「ダァーーンッ」
神谷は男の背後から後頭部を撃ち抜いた。
男は勢い良く床に倒れ、神谷は男の開いたままの眼球を見つめながら言った。
「馬鹿が。生かして帰す訳ないじゃん」
最初のコメントを投稿しよう!