探し人

　ある日、男が蒸発した。
　家族をおいて失踪したのだ。
　心配した家族は警察に行ったりビラを配ったりして男を探した。
　しばらくして、遠く離れた街で男は見つかった。
　男の妻は言った。
　「心配したのよ。いったいどうして失踪したりしたの」
　「ちょっと、生きる意味を探して。まさか自分が探される側になっているとはね」
　男が頭をかいて答えると、妻は言った。
　「もうどこにも行かないでね。あなたは私の生きる意味なんだから」
　おや、と男は言った。
　「それでは僕も君が生きる意味だ、と言わざるを得ないな。探していた、生きる意味はこんな近くにあったのか。灯台もと暗し、とはこのことだ」
　二人は笑い、そうして二度と離れることはなかった。