1. 新宿駅、冬

2/4

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
   ポケットのスマホが振動した。立ち止まり確認すると、某SNSのアイコンに『メッセージが届いています』のマークが表示されている。送ってくる相手は一人しかいなかった。 @サクラ《こっちはもう着いてるよ。予定通り、靖国通り沿いのファミレス。店のエントランス入って右手の奥。あたし、グラデーション入ったスモーキーグレーのマニュキアを塗ってるから》    スモーキーグレーの……マニュキア? よく分からない女の、よく分からない爪の色を想像した。髪型や服装ではなくマニュキアの色を目印に指定するのは、こういう場合によくあることなのだろうか。   〝こういう場合〟とは、〝SNSを通じて知り合った素性のよく分からない者同士が、ひょんなきっかけで実際に会う羽目になったこと〟を意味する。  到着した時、《サクラ》が手のひらをグーにしていませんようにと、ネヅは願う。彼女を探し出す手立ては、今のところ爪だけなのだから。  その顔も、背格好も、年齢も、何をやっている人なのかも、ネヅはまだ知らない。名前から女だと勝手に決めつけたが、男の可能性もなくはない。でも、だとしたらそれは、マニキュアを塗ってる男(女装?)、ということになるのか。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加