推しの結婚

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 ファンイベ、となったもののどう対応すれば良いのか悩み始めた。というのも、通常ファンイベの主催は推し側で、ファンは推しに会いに行く。  しかし進藤くんと私の場合は、イベント計画がファン側、推しである私は特に準備することがない。  仕方ないので私は歌える曲を再度洗い出し、練習。当日は出来る限りめかし込んで行くことにした。  推しは人前に出る時、いつもきらきら完璧だったので。  当日、待ち合わせ場所に着いた私は、思わず「あっ」と声を上げた。  スマホを眺めながら立っている進藤くんはいつものくしゃくしゃ頭だけど、それはちゃんとセットされたくしゃくしゃだ。  さらに普段はTシャツにジーパンなのに、今日はさらりとした襟付き縦ストライプのシャツ。それにベージュのボトム。  なんというかいつもより、ちゃんとしている。彼はきちんと推しのファンイベ仕様で来てくれたのだ。 「おっ」  立ち尽くす私に気付いた進藤くんは私のことを見て、すぐに破顔した。 「わあ! 素敵だね!」  私も普段は適当なカットソーにボトムで大学に行っているが、昨夜は悩みに悩んだ。  彼の推しなわけだから、ひょっとすると思いっきりガーリーな格好で行った方が良いのかと思ったが、それは似合わないことは分かっている。  背が高めでひょろりとした身体、しかも髪はボブなので、しゅっとした格好の方が合っているのだ。  そのため、今日はきれいめ縦ストライプシャツにスキニージーンズ、靴はカラフルなスニーカー。ちょっと中性的すぎかもしれないが、似合うものを着るべきだと思ったのだ。  それを直球で褒められて、ちょっと嬉しい。悩んだかいがあった。  進藤くんはにこにこと近付いてきて、自分のシャツと私のシャツを交互に指差す。 「おそろいみたいだね」 「あー、そうだね」  打ち合わせをしたわけでもないのに、縦ストライプでリンクコーデみたいになってしまった。  苦笑すると、進藤くんが「行こう」と促してくる。 「どこに行くの?」 「えーとまずは、歌だね」  連れていかれたのはカラオケだ。
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