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船の上ってつまらない…。
どこを見ても水平線。話をする人もいないんだから、当たり前だけど。
けど、夜は綺麗だわ。海の闇は怖いけど、空にはキラキラと星が輝いてる。
ニニハハの星も綺麗だったけれど、こんなに大きく見渡せない。
「踏まれるよ」
「…それで死ねるなら願ったりよ」
床に寝転がっていたら、レギラにヒョイと顔を覗かれた。
「昔は可愛かったのに。どうしてひねくれて育ったの。やっぱり一緒に暮らしてまっすぐな昔のナルにもどらないと。」
「戻らないわ。貴方と一緒にいたら、性格も悪くなるし、精神的に死にそうよ。」
「俺は君が好きだと言っても、信じないのは何故?」
「憎まれるほど愛される憶えもないし…。申し訳ないけど、貴方に会った事を全く憶えていないの。…口づけしたからといって、側にいなくてもいいよね。」
「憶えてないとは思ってたから、申し訳なく思う事はないよ。」
この男は、何を飄々と…
「貴方の髪って珍しい色ね。桔梗みたいだわ。」
「…それは紫という事?」
「そうね。綺麗だと思うわ。」
この人は私を連れていって何をするつもりなの…?それが解らないと怖い。
嫌な予感しかしない。
死ぬほど憎い…死ぬほど愛しい…。もし私が何処かの国に連れ去られたりしたらどうなるの?
この人は私を取り戻しに来るの?もしそうなら、起こらなくていい戦いが始まる可能性があるし…。
死ぬほど愛しい…死ぬほど憎い…
殺さないと気がすまない…という気持ちが恐ろしい。
「…どうしたの?」
レギラの顔が赤い。月明かりでもわかるくらい。もしかして綺麗だと言ったから?
「照れてるの?」
「…その通りだから言い訳はしない。照れてるよ。」
…何この人。
殺すとか簡単に言うのに、それだけで、照れるなんて…。
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