殺意と好意

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殺意と好意

口付け。 私の国では、『将来を誓いあう2人』がするもの。 けれどカルイシアでは、『殺したい人』にするもの。 この男は、どちらの意味でそれをしようと思ったの? この国に合わせて、『誓いの口づけ』? それともカルイシアに? 私が『ナル』と気が付いたから、『死の口付け』を? どちらも最悪じゃないの!! 2人が誓いあうというのは無いよね。…私を殺すという事なの? 「…口付けは簡単にするべきではありません。」 「…意外と冷静なんだね。」 冷静なわけないじゃない!いま、生と死の狭間にいるのよ! …それに、将来自分の好きな人と結婚出来ないのは解っているけど、もし好きな人が出来たら跡目を放棄してその人としたかったのに…。 こんな敵の王様の子なんかにされるなんて最悪だわ。 「将来を誓いあう2人…って意味。一目惚れ、だから俺の国へ連れて行くよ。」 「ちょっ…ちょっと待ったぁーー!俺は何も返事をしていない。それに俺は男だぁーー!」 「性別は拘らない。この国では口付けをした2人は結ばれるんだよね。」 「双方の同意がなければ無効っ!強引にしたものを数にいれていたら、貴方のようにむりやりにする人がいるから!!」 「俺の国では無理矢理するものなんだよ。」 「………」 私、殺される。 「貴方の国の事など、この国では無効だ!」 「だから連れていく。」 「貴方の国では、どんな意味があるのですか?」 「死ぬほど愛しい」 「そうなのですか…」 そんな意味だったんだ。めちゃくちゃ好きだっていう、度を超えた愛ってことなのね。どこをどう間違えて『死の口づけ』だなんて… 「それと『死ぬほど憎い』だ。」 助けてください。 どちらの意味なの!? 後者の可能性の方が高いよね。 「俺には、この島国の意味の方が好ましいです。」 「俺もだよ。だから連れて行こうかと思って。 それっておかしくない?だったらここにいるべきよね。なのに連れていく?連行、打ち首、獄門(ごくもん)よ。 「君の国は色々と珍しいものがあるよね。島国だからなのかな?」 「そうですね。」 その文化と資源と技がほしくて、この島を狙っているくせに、よく言えるわ。面の皮が厚い、噂は本当ね。 今はそんな事より、どうにかしないと。あの大陸に連れて行かれれば、自力で帰ってくる事は出来ない。 船で20日くらいかかるって聞いた事がある。二度と島の土を踏めなくなるわ。そんなの嫌っ!冗談じゃない!!
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