殺意と好意

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妹がいるから、島は何とかなる。けれど、私は何ともならないよね。この世からさようなら。 こうなったら、泳いで逃げるしかない! この時間は漁に出てる漁舟が近くを通る…といっても、ここから1キロ以上はあると思う。でも泳げない距離じゃない!! 海の上だからって安心しすぎよ。私を拘束してないんだから。 一か八か! 「…っ」 船の縁に飛び乗って、私はそのまま海に飛び込んだ。 「…っおいっ!?まてっ!」 ザッパーン 飛び込み成功よ!幸先いいわ。 服を脱がなきゃ速度が落ちる。体温が奪われるけれど、舟までの辛抱よ! 最低限の服だけ身につけて私は泳いだ。すぐに追いかけてくるはず。追い付けないくらいまでは進まないと!! 「大至急、小舟を下ろせっ!!人が落ちた!」 ニニハハの民は水と相性がいいのよ。きっと追い付けないわ。 ……って、舟こぐの速すぎない? 絶対追いつけないと思ってたのに、もうすぐ追いつかれそうよ! 私は海の深くに潜った。深水で進めば距離もかせげるし、レギラにも見つからないわ。 あれ? 舟は動いてない?私の事、見失ってる? 「っ!?」 嘘でしょ!? 「……っゴホ」 上から落ちてくるのって網!? 人の作った物で、海最大の武器よ。これだけには絶対に勝てないわ。もがけばもがくほど絡まって泳げない…。 あ、まずいわ。焦って息を吐きすぎた…。このままじゃ、きっと死ぬわね。 けど、カルイシアで死ぬよりニニハハの海に帰る方がいい…。 「引き上げろ、かかってる。」 「ハイッ!」 「…よく飛び込めましたね。普通無理ですよ。」 「度胸はあるな。」 「っレギラ様、息をしている様子がありません。」 「…っくそ」 パチパチと顔を叩かれた気がした。 「ゴホゴホ…ケホっ……はぁ…」 捕まった…。もうこれで、島には帰れないよね。けど諦めないわ…。 「オイっ!こっちを見ろ!」 「……」 ふざけないでよ。貴方なんて見たくもないわ。 涙が出てきた。でも海水で濡れてるからわからないはず。こんな人達に泣いてるなんて絶対気がつかれたくない。 私はルカ…男としてカルイシアに行っても、女としてこの海に帰ってくる。
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