殺意と好意

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「ごほごほっ…」 「何をしているんだ!死ぬとこだったんだぞ!」 「…死んでも…いいと思ったから……飛び込んだんだ。」 「悪いけど監禁させてもらうよ。何度も飛び込まれたら迷惑だからね。」 「それを言うならこっちの台詞だよ。勝手に連れてこられて、『迷惑』だなんてよく言うな。」 その日1度も部屋の外には出してもらえなかった。 着くまでずっと監禁されるとかないよね。私を誘拐して島をのっとる作戦…とかなら解るんだけど、別にそれなら船で交渉だって出来るのに。 「やることがなくて死にそう。」 そう言ったのを誰かが聞いていたのかもしれない。 「俺は何をしてるんでしょうか?」 「友として夕食を共にしているんだよ。」 「そうですか…」 出てきた料理は見た事の無いものばかりだわ。しかも、この道具は何?…鉄?の棒みたいなの。 見よう見まねでやってみるけど、出来ないわ。この棒みたいなのを二本持って挟んでみようかな…。 …面倒だわ。もう手で掴んで食べる。豪快な男の子という印象を与えればいいのよ。 私は大きな肉の塊を手で掴んで食べた。 口のまわりがベトベトだし、服も汚れちゃったけど、そのうち乾くし雨が降れば洗えるよね。 「…配慮がたりなかったね。島では箸しか使わないのに。」 「いえ、これでも食べれますので。」 配慮とかいう言葉が存在している事に驚くわ。人を誘拐しておいて。私だから言葉をかわせるけど島民には無理だし、やっぱり私が拐われたことは不幸中の幸いなのかも。 誰にもこんな風になって欲しくはない。行きつく先は地獄なのだとしたらね。
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