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「……知っていて連れてきたの?」
「いや、海に落ちたときに女性なのは解ったし、胸にある刻印で神子の家系だともわかった。なら、ニニハハの女だ。」
「私を好きだとか…嘘までついて私を連れて行って何をするの。」
「嘘じゃないから困るんだよ。いつか殺してしまう。」
「っ殺す…!?」
「ナルが俺以外と一緒にいればね。」
どこまで本気で言ってるんだろう。口づけで殺されるなんて…。
「何を言ってるのか、意味が解らないわ…。私は貴方の敵なのよ?」
「だから、会う事は叶わないと思っていたよ。相手は敵対してる島の神子。会えるわけがない。けれど会えた。そして口付けする相手がナルだった。」
会えるわけがないと解っていて島に来た…。
「もしかして…脅迫状は貴方なの?」
「脅迫?何の事だ?もしそれをしていたとして、ナルに会える訳もないのに。」
「…好きだなんて、私は貴方にあった事はないのに、何を馬鹿みたいな事を。」
「会っている。1度だけ…、俺はその時『結婚しよう』と言った。」
「……」
どうしよう。全然憶えていないわ。
もしかして、とても大切な思い出にしてくれてたの?非道王の息子なのよ…何だか想像と違う。
「同室なのは、ここには男しかいないからだ。大丈夫だとは思うが、万が一の事もある。」
意外だわ、ちゃんと考えてくれていたなんて…。
「もしナルに何かあった場合、連帯責任。皆殺されるとわかっているだろうし。」
「……皆を殺す?」
「非道王だと言われる1つはこれだよ。口付けをした女性に何かあれば、関係ない場合でもその場にいた者は殺す。」
『死ぬほど愛しい…』『死ぬほど憎い』
「口づけしても、その女性と好きで結ばれる訳ではないんだよね?」
「そうであっても変わらない。」
「……っ」
恐ろしいわ…。好きでもない人と一生を共にする事を強いられるのも、その事でまわりが殺される事も。
「そんなに青い顔をしなくてもいいよ。」
「…だったら、貴方はそんな事をする人にはならないの?」
「俺はナルを愛しているから、どちらにしても殺すのは違わない。」
「…っ!?」
優しく微笑む姿は、何よりも恐ろしい。
「人を簡単に殺す人を好きにはなるつもりはないっ!」
「うん。」
「何を納得しているのよっ!私は貴方のものじゃないし、その為にまわりが殺されるなんておかしいじゃないっ!!」
喋ってる途中に、レギラが窓の外を見た。
「……なるほど。本当だ。」
「……?…解ってくれたの?」
「どうかな。ただ君が怒れば海が荒れる。」
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