30人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぅわわっ!!」
なにっ!?急に船が…っ!
転びそうな所を受け止めてくれたけれど、船の揺れは止まらないし、2人揃って転んでしまった。けれど、レギラが下になってくれたから、私はそれほど痛くなかった。
「まだ起きない方がいい。簡単に揺れはなくならない。」
気付けばものすごい勢いで雨が降っている。ついさっきまで晴れていたのに…。
「…もしかして転覆するの?」
「大丈夫だと思うけど…。」
「思うだけなの!?」
「…君が落ち着けば何とかなるよ。」
「何ともならないわよ!」
「君は雨乞いの神子だろ?」
「まさか、それで雨が降ったり止んだりする理由だとでも思ってるのっ?」
「違うのか…?島の神子は雨を司ると、どの国でも言われているぞ。」
「どこ発信の情報なの!こんな雨、ただの偶然よ。」
「……」
期待はずれ…みたいな顔をしてるし。
「…まさか、私を連れてきた理由って、雨を降らせてほしいから…とか言わないよね。」
「好きな女だからだと言ってるのに、なぜ信じないのか…」
「絶対にありえない!…っさっさと離れなさいよ!」
「君が上にのってるんだけど。……まぁ離れなくていいよ、ナルは柔らかくて気持ちいいし。」
「…っ何を言ってるのよ!」
「事実を言ったまでだけど。」
「柔らかくなんてないわ!くっつかないで!っわ!!」
どうしよう!さっきの比じゃないくらい、物凄く船がゆれだした!
「っこのままじゃ本当に沈むな…」
無理やり連れてこられて、海で溺れて死ぬなんて嫌よ!
奉納の舞い、その時に『天に感謝』の意を込めて舞うのが『雨と晴』なの!私は神楽で舞うだけの神子なのよ!本当に雨乞いなんて出来るわけないのに…!
「ナル、大丈夫。ここでいい子にしてるんだよ。」
「え……?」
私に言ってから、レギラは外へ出ていった。部屋の中にも海水が入ってくる。きっと船内は水がたまって溺れる人だって出てきてしまうわ…
『ムカミが落ちだぞーっ!!』
『うわぁああ!!』
今まで自分の事で精一杯だったけど、外では頑張って船を沈まないようにしてる人がいる…。
雨乞い…本当か嘘か知らないわ。
雲を散らす晴れの舞いもある。
舞えないけれど、心で祈ってみた。
『天よ、涙は必要ない。私が貴女の代わりに泣こう。』
誘拐されて、本当に泣きたいし、いつでも代行するわ!!
最初のコメントを投稿しよう!