181話 よくある いつもの日常へ

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 でも、そのことは口に出来ない。彼女にはユウキ様がいるのだ。  そうわかっているのに口が開いてしまう。 「ユーディー様……」  はい――と、耳元で返事が囁かれる。でも、名を呼ぶ以上のことは出来なかった。ただ強く抱きしめ、柔らかい身体を押し付け、僕の高鳴る鼓動を伝える。  あなたを愛しています!   と。  しかし、この気持ちには気づいてほしくない。彼女を困らせたくない。それでも、知ってほしかった。 「ユーディー様……」 「はい」 「ユーディー様」 「はい」  不意に、今度は彼女が胸を押し付けてくる。鼓動が聞こえる気がした。  忘れない。忘れたくない。  柔らかい体も。長い髪も。細い首も。すべすべとした肌も。彼女の香りも。  そう脆く感じる身体を手探る。時折ユーディー様の口から吐息が漏れる。何度も僕の名を口ずさむ。  身体をよじらせるユーディー様のそのすべてを忘れたくない。そう手弄っていると、ピクンと彼女の身体が伸びた。そのことで正気に戻り、彼女からゆっくりと手を放し、上目遣いの顔を窺った。  頬を赤らめ、とろんと溶けてしまったような表情をしている。思わず吸い込まれそうになっていると、背伸びするユーディー様が鼻の頭をすり合わせてきた。そして、お互いに目をつぶって黙ったまま額を合わせた。  あなたが好きです。  その僕の想いはどこまで届いただろう。  しばらくして瞼を開けると、ゆっくりと体を離した。  ユーディー様が恥ずかしそうに、肩からずり落ちているケープを持ち上げる。 「ギル様。身なりを整えたいので、しばらく背を向けて頂けませんか」
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