181話 よくある いつもの日常へ

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 ケープの中のブレサーのボタンが外れて、スカートからシャツの裾がでている。そんな淫らな彼女の姿を見て我に返り「すみません」と回れ右と背を向けた。  ユーディー様の肌の手触りと温もりの残滓が手のひらに溢れている。  想いを伝えたかっただけなのに、僕はなんてことをしてしまったのだろう。  彼女には婚約者がいるのに。  理性を失い、とてつもない罪を犯してしまった。困らせてはいけないとわかっていたはずなのに。 「ユーディー様! あ、あのう、僕は……申し訳」 「謝らないでください!」 「え?」  背を向けたまま、驚きのあまり言葉を飲んでしまった。 「お願いですから謝らないでください。謝られると悲しくなります」 「しかし……」 「わたくしはこの学園に来て、ギル様と出会い、今の今まで幸せでした。その幸せを否定しないでください。お願いいたします」 「でもユーディー様にはユウキ様が」 「わたくしの心の中はわたくしだけのものです。誰がなにをしようとも、それだけは絶対に譲りません。絶対に。ですので、わたくしの心の中の想いを否定しないでください」  身なりを整えた彼女が隣りに来て僕の手を取ると、そう小指を絡ませてくる。 「わたくしはギル様を信じています。今までも、そしてこれからも。だから謝らず、ずっと笑っていてください」  ユーディー様が微笑んでいる。  やっぱり僕は彼女が好きだ!   僕もこの気持ちを否定したくない。そして、忘れたくない。  はい――そう返事をして笑みを返す。 「それではギル様参りましょう」  僕が頷くとゆっくりと歩み始めた。ゆっくりと。長い時間をかけて。
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