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ケープの中のブレサーのボタンが外れて、スカートからシャツの裾がでている。そんな淫らな彼女の姿を見て我に返り「すみません」と回れ右と背を向けた。
ユーディー様の肌の手触りと温もりの残滓が手のひらに溢れている。
想いを伝えたかっただけなのに、僕はなんてことをしてしまったのだろう。
彼女には婚約者がいるのに。
理性を失い、とてつもない罪を犯してしまった。困らせてはいけないとわかっていたはずなのに。
「ユーディー様! あ、あのう、僕は……申し訳」
「謝らないでください!」
「え?」
背を向けたまま、驚きのあまり言葉を飲んでしまった。
「お願いですから謝らないでください。謝られると悲しくなります」
「しかし……」
「わたくしはこの学園に来て、ギル様と出会い、今の今まで幸せでした。その幸せを否定しないでください。お願いいたします」
「でもユーディー様にはユウキ様が」
「わたくしの心の中はわたくしだけのものです。誰がなにをしようとも、それだけは絶対に譲りません。絶対に。ですので、わたくしの心の中の想いを否定しないでください」
身なりを整えた彼女が隣りに来て僕の手を取ると、そう小指を絡ませてくる。
「わたくしはギル様を信じています。今までも、そしてこれからも。だから謝らず、ずっと笑っていてください」
ユーディー様が微笑んでいる。
やっぱり僕は彼女が好きだ!
僕もこの気持ちを否定したくない。そして、忘れたくない。
はい――そう返事をして笑みを返す。
「それではギル様参りましょう」
僕が頷くとゆっくりと歩み始めた。ゆっくりと。長い時間をかけて。
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