134話 よくある 少女の決意 その① (イゼッタ視点)

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134話 よくある 少女の決意 その① (イゼッタ視点)

 領地では子供たちを祝う儀式が三回ある。  三歳になれば大聖堂や神殿でお披露目会が行われる。  司教様より有難い言葉を頂き、多くの貴族が参列する中、挨拶をするのだ。  五歳になると子供たちの社交会がある。この時の振る舞いである程度の交友関係が決まると言ってもいい。  そして学舎に通い始める七歳になると、上位貴族の子どもたちは王城に招かれる。子どもたちはこの時、初めて他の領地の貴族と顔を合わせるのだ。  葡萄ジュースが注がれたグラスを両手に会場の隅へと歩む。 「リリー姫様。気分でも優れないのでしょうか?」  そう声をかけ、椅子に腰かけている彼女にグラスを差し出した。 「あなたは確か……」  銀髪のおかっぱ頭を上げ、黄土色の瞳がわたくしを見据えてくる。 「ヴァーリアル領のイゼッタです」  リリー姫様は差し出したグラスを受け取ってくれると「ありがとうイゼッタ」と薄い笑みを返してくれた。 「お体の具合でも悪いのでしょうか?」  ほとんどの時間、一人でいることが多い彼女に訊ねる。すると首を振って否定する態度を見せた。  そういえば―― 「ソルティ様の体調が心配なのでしょうか?」  ガーネシリア領の妃さまは身体が弱く、この行事に姿を見せていないと聞いていた。  意思表示を見せず黙ったまま葡萄ジューを口に含むリリー姫様に、思わず難色を面に出しかけた。  七歳になると魔力の有無がはっきりとする。そのため、この会場では魔力持ちとそうでない者と集まりが出来てしまっている。
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