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と母君はおっしゃられた。
「はい。ですが、私は母上様のように、優しく、美しゅうなりとうございます。」
「あらあら、それは嬉しい事。それならば、お稽古を一層頑張らねば。」
と言われた。母君に嬉しいと言われ姫君も嬉しかった。
「そなたの成長を楽しみにしておりますよ。」と言われ、これからもっと頑張ろうと心の中で誓ったのだった。
「しかし、それは誰の影響じゃ?」と言われ、心臓が一瞬飛び跳ねました。
「えっと、お花見の時の男の子を見た時に、あんな風に強くありたいと思いました。」
「そうか、ならば励みなさい。」
「はい。」
とお互いに預かり知らぬ所で、影響を受けていたのでした。
それから、しばらくの間は母君の調子も良くお話する時間も増えていたため、誰もが回復に向かっていると思っていた。
姫君は東寺に行った後もずっとお祈りを欠かさず日課として行っておりました。
姫君はそのお祈りが通じたと思い、嬉しくなっていた矢先の事です。
また風邪をひいて、しばらく寝込まれたのでまたいつものようにお祈りと、お医者に診せて治ると皆思っておりました。
しかし、何日経っても一向に回復の兆しが見えてきません。
何度も何度も姫君はお祈りや、心休まるようにお琴を聴かせたり色んなことをしてみましたが、容体は悪くなっていく一方でした。
ある時、母君が珍しく床に姫君を呼びました。それが嬉しくて急いで母君の元へ駆け寄ります。
「母上様、きっと良くなられますから。またお話して下さい。」
返事はありません。
その代わり苦しそうな息づかいが聞こえてきます。
「母上様、しっかりなさってください。」
姫君は必死になって呼びかけます。
それから泊まり込みで、お医者が診ておりました。
屋敷内は慌ただしく、お湯運んだり、薬を運んだり、動いておりました。
しかし、それも力及ばず。
父君はお医者と2人だけで、お話をされるため席を立たれました。
そして、父君のお部屋でしばらくお話をされ、出てこられた時の父君のお顔は何とも言えない。言い表しようのない。とても暗い顔をなさっておりました。
それを見た瞬間姫君はこの状況と、父君のお顔で全てを察してしまいました。
子供はそういった感情を読み解くのにはかなり鋭いもの。
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