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「え、あなたも会ったの!」
弥佳は何気なく話したことが、こんなに驚かれるとは思わなかった。
友人の千尋は目をまんまるにして、口をパクパクさせて、次の言葉が出てこなかった。千尋は天を見上げ、それから両手を胸に当てて深呼吸をして、ようやく口を開いた。
「あのね、その人、私を含めて5人に同じ質問してるわよ。」
「え、黒猫を探しています。知りませんか?って?」
「そうそう、一言一句、そっくりそのままよ。どんな服装だった?」
「上下灰色で横に黒のラインがあるジャージだった。」
「え!皆違う…。」
「何が違うの?同じ人じゃないの?」
「それが…。」
千尋から聞いた話をまとめると、話しかける言葉は一言一句同じなのに、服装が全然違うのだ。
千尋はダークスーツでサラリーマンのように見えたと言い、千尋の友人・知人は、紺色の作業服、白いTシャツにダメージ加工のジーンズ、紺色のエプロンに紺色のTシャツにベージュのハーフパンツ、どこかの制服のような白の半袖のワイシャツに紺色のスラックスを着ていたと言うのだ。
ただ背格好や髪型などは同じようで、同一人物に思えるのだ。それでさらに不思議なのはそれぞれがその人に会ったのは時間帯は違ったが、同じ日だった。
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