相応しい服装って…

講義が終わって、また例の人物について考えた。先生から「相応しい服装」というのがヒントになった気がした。

というのも、私が声をかけられたのは、ジョギングやウォーキングをする人がたくさんいる公園だったからだ。千尋はどこで会ったんだろう。もしかしたらビジネスマンがいるのが相応しい場所だったのかな。

千尋にその人に会ったという人から、どこで会ったのかを聞いてもらったところ、私の予想は的中した。それぞれが相応しい場所で相応しい服装をしていたのだ。

そこまで突き止めて、果たしてその人は本当に同一人物なのかが分からなくなった。一言一句違えない言葉と背格好と容姿が似ている5人の別人だったのではないか。

しかし、一言一句違えないというのも引っかかる。言葉というのは不思議だ。日本語という同じルールの中で言葉を使っていても、使う言葉には個性が出る。だから、一言一句同じというのは同一人物であると考えてしまうのもそれほど大袈裟なことではないとも思う。

どうして服装が違ったのか、実は複数人なのかを知りたかったけど、その人を探す方法もないし、手がかりもなかった。私にできるのは、遠回りになるが、大学への通学路を変更して、前に会った公園を通るようすることだった。