エストレリャ

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読めない。 いや、まて。下にローマ字で… 「ちょっ…日ケ原さん…顔が 近いです。あなたには 安定性のあるサービス業 などが…」 「安定性?」 「この世に人類がいる限り 〈飲食〉 これは外(はず)せない」 目からウロコ。 食関係は全人類的職業か。 確かにな。 名前どおりなかなかスケールの 大きい貴重なアドバイスをくれる。 「ありがとございます。 では、初心にかえって… ところで、半井(なからい)さん セフレいます?」 「なっ!?」 「あなた、マジ、俺のタイプ なんスけど。 よかったらメアド…」 カウンター越しに彼の肩に手を置き、モバイルを差し出す。 「ちょっ…お、おります! 他人(ひと)の心配はいい ですっ」 手を振り払われて キッパリ断られた。 「へえ、いるんなら いいんですよ。 別に。 何してる男(ひと)?」 「きょ、教師」 「キョンシー? (懐かしいホラーだな。 季節柄ジョークか)」 「公務員っ!」 「そりゃ、また似合いな」 グリーンモンスターばりの壁に 阻(はば)まれた感じ。 あっちもこっちも不採用。 しゃあねえ。 とりあえずバイト決めよ。 バイト誌購入。 『レストランテ☆エストレリャ スタッフ 募集 ホール 若干名』 なになに、エストレリャ? (舌噛みそう) スペイン語で〈星〉 それで五角形の建物なのか。 「ホールチーフの星野一輝 (ほしの かずき)です」 面接担当の こっ、これはっ、どうよっ! 蝶ネクタイの〈THE 眉目秀麗〉 ハートにズギューン!! ヤ、ヤられたっ! 「日ケ原 渉(ひがはら わたる) さん、履歴書拝見」 「はいっ!」 「これから、簡単な 採用試験をします」 「採用試験? 聞いてませんけど」 「バイト誌募集欄に記載して あります。ほら、ここに」 「文字小っさぁ」 「ご納得いただけなければ、 お帰りいただいて結構です」 「いえ、いえ、そんな。 あなたに頼まれれば、俺、 なんだってします!」 俺は、水の満たされたグラスを いくつか乗せたトレーを渡された。
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