エストレリャ

1/9
前へ
/9ページ
次へ
輝く〈星〉になりたくて 友達(ダチ)とバンドを組んで 高校卒業後 街で路上デビューした。 地元テレビと地域新聞に 一回ずつ取りあげられたが メジャーデビューの話もなく バンドは解散。 「おつかれした」 「やっぱ、アニソンコピー ばっかじゃなー」 「しかし、ヲタは喜ばした」 『ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!』 『もえもえ、きゅ~ん!』 って、それなりに歓声はわかせた んだが、夢はすでに過ぎ去った。 マブダチはファンの娘(こ)と結婚 した。 「おまえがこのままでは、 母さんに顔向けが…」 母親の写真の前で、実家の父親が 泣くし、収入情況が厳しいので… 「兄貴? 俺、俺。 渉(わたる)だけどさ リクルート スーツ貸して」 髪を切って、就活を始めた。 スーツでキメた俺もかなり 「イケてる!」 これからは… 「めざせ、会社の〈星〉! 待ってろ、てっぺん!」 A社の面接会場では〈志望動機〉 を訊かれた。 「二十歳(ハタチ)越えして、 そろそろヤバイかなって…」 正直に応えたんだが なんか引かれたっぽい。 B企業では〈スキル〉の有無を訊 かれた。 「俺、カラオケ6h(アワー) イケますっ!」 自信満々で応えたのに、 これもまた… C企画で 〈自信のあることはなんですか?〉 と尋ねられたので 「1に体力、2に容姿ですっ」 今度こそビシイとキメたのに、 担当者は なぜ 「ああ、近頃の若いのは ホントに、もう…」 と頭を抱える? で、ハローワークを訪ねてみた。 担当者が黒髪の美青年。 超 タイプで、これはラッキー! 親身に相談にのってくれるし。 「うーん、日ケ原(ひがはら)さん は、デスクワークより現場向き だと思いますけどね…」 ペンを左手に握ってる。 レフティ(左利き)だ。 素早く、胸に下げてる ネームカードを読む。 半井大貴 ?
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加