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帰り道。
いつも通り秀人が和花を送っていく。
「お先に失礼します」と挨拶をした和花とそれを追うように席を立った秀人を、同僚たちはあたたかい目で見守っていたことは言うまでもない。
「私、今日感動しました」
ハニカミながら和花が呟く。
「うん?」
「今まで自分のことばかりでまわりをちゃんと見てなかったなぁって。男性不信を理由に人と深く関わらないようにしていたんです。悪い人ばかりじゃないってわかっていたつもりだけど、わかっていなかったみたいです。皆さんからお祝いされて、私はいつも自分から壁を作ってたんだなって。佐伯さんのおかげで知ることができました」
いつも和花に寄り添ってくれるなぎさだけでなく、元上司の林部にチーム員の高柳も小百合も、皆が和花と秀人の交際を喜んでお祝いの言葉をかけてくれたことは和花にとって心を打たれる出来事であり、恥ずかしさを差し引いても感慨深いものとなった。
「僕も和花のおかげでわかった。今まで自分の恋愛が上手く行かなかったのはちゃんと相手を見てなかったんだなって。和花を好きになって、大切で守りたいって、本気で思うんだ」
「佐伯さん」
「もう会社出たんだから、名前で呼んでよ」
「……秀人さん」
小さく秀人だけに聞こえる声で名前を呼ぶと、秀人は和花の手を取りぐっと引き寄せ耳打ちする。
「和花やばい。名前で呼ばれると和花を抱きたくなる」
「えっ!」
「だって和花可愛いから」
そのまま耳たぶにちゅっと可愛い音を立てられ、和花は体が熱くなるのがわかった。握っている手がしだいに絡み合う。
「ひ、秀人さん、お家に帰ってから」
「帰ってからならいいの?」
甘く微笑む秀人に、和花は頷くしかない。
今夜も甘い夜になりそうな予感を感じさせながら、二人は幸せそうに夜道を歩いていった。
【END】
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