放っておけない

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「……あの、掴みかかられそうになったのを避けたら三井さんが階段を踏み外して落ちてしまって。私、どうしたら……」 秀人の袖を掴む手は小さく震えている。秀人はその手をそっと外すとしっかりと握りしめた。 「それで、三井さんは?」 「それは私からご説明します。三井は頭をぶつけましたが五針縫っただけです。泥酔状態だった様です。本当に、この度は橘さんにご迷惑をおかけしまして申し訳ない。三井に代わりお詫び申し上げます」 三井の上司はうやうやしく頭を下げた。 本当は今この場で三井の胸ぐらでも掴んで殴ってやりたい気持ちだったが、秀人は繋いでいる手から和花の体温を感じ取り自分を落ち着かせる。そして自分でも驚くほど冷ややかな口調で告げた。 「わかりました。この件について今後は橘に代わり私が引き受けますがよろしいですね?後日ご連絡を差し上げても?」 「はい、もちろんでございます」 三井の上司もとばっちりではあるが、元はといえばHOKUTOシステムが訪問してきたときに三井が和花にセクハラまがいのことをしたことに始まる。三井個人が犯した罪とはいえ、仕事中のことは監督不行き届きで上司にも責任が及ぶのだ。 秀人はこれ以上和花をこの場に留まらせたくなく、さっさと話を切り上げて和花を連れて病院を出た。 三井に対しての怒りと共に、和花を護れなかった自分自身にも怒りがわいてくる。
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