放っておけない

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「……えっと」 秀人が次の言葉を紡ぐ前に、和花が先に口を開く。 「あの言葉、有効でしょうか?」 「あの言葉?」 「パーティーで、橘さんが僕の彼女になってくれる?って……」 ぐっと言葉に詰まる。 あの時冗談で済ませた言葉は紛れもなく秀人が和花に向けて放った言葉だ。もちろんからかって言った訳ではないが、その時はまだ自分の気持ちがはっきりとしていなく、ポロっと出てしまった言葉だった。半分本気、半分冗談といった感じだ。 だが今はどうだろうか。 「私、佐伯さんが好きです」 秀人は目を見開く。 とても小さな声だったが和花の表情は真剣そのもので、秀人の心にすっと染み込んでいく。秀人は目元を緩めると大きく頷いた。 「……知ってるよ。いくら鈍感でつまらない俺でも、わかるよ」 秀人はそっと和花の頭を撫でる。 大きくて優しい手は和花を心地よくうっとりとさせた。そしてそのまま秀人は和花を自分の胸へ引き寄せる。 軽く抱きしめれば和花は迷わず身を委ねた。 ドキドキ……と、お互い緊張が伝わるかのような触れ合い。まるで初めて恋をしたかのような感覚に、二人とも言葉を失う。 「……そういえばチーズパンありがとう。美味しかった」 秀人が照れ隠しに言うと和花は嬉しそうに微笑む。 「また作りますよ」 「それは楽しみだな」 秀人は和花の手を握り再び歩き出す。 和花の涙はすっかり乾いて、纏う空気も柔らかかった。
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