特別扱い

8/18
前へ
/100ページ
次へ
二人で過ごす時間はあっという間に過ぎていく。おしゃべりをしたりDVDを観たりしていたら、もう夕方になっていた。 「全然お腹すきません」 「僕も。すき焼き食べすぎたかな」 「夕飯はいりませんね。あ、でも甘いもの食べたいかも」 「コンビニでも行く?」 「はいっ」 外に出るとすっかりと陽は落ち薄暗くなっていた。コンビニまではすぐそこだ。昼間もガス缶を買いに二人で歩いた。同じ道を、秀人は慣れたように歩いていく。その姿を半歩後ろから見て、和花は急に胸がぎゅんぎゅん締め付けられた。 (佐伯さん、後ろ姿もかっこいい……。手、繋ぎたいな……) そっと袖を掴むと、秀人は気づいて立ち止まる。 「どうかした?」 「えっ、いや、何でも……」 急に恥ずかしくなりパッと手を離すと、秀人は声もなく微笑む。そして和花の手をぎゅっと握るとまた歩き出した。 (うわぁ~うわぁ~) あたたかくて大きな手は和花の心ごと掴んで離さない。 「手、繋ぎたかったの?」 「……はい」 「遠慮しなくてもいいのに」 「……だって」 「そんな和花も可愛いけど、積極的な和花も見てみたいな」 少し意地悪そうに微笑む秀人に、和花は顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせた。それを見て秀人は楽しそうに笑った。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3352人が本棚に入れています
本棚に追加