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スイーツも食べ、夜は更けていく。 もしかしたらこのまま秀人は泊まっていくのでは……などとあらぬ妄想をした和花だったが、秀人はあっさりと帰ると言った。 残念なようなほっとしたような、複雑な気分だ。もっと一緒にいたい。けれど明日も会える。秀人が帰ったら美味しい牛丼のレシピを検索しなくてはいけない。 「明日は牛丼ですよ」 「楽しみだな。じゃあまた明日」 ただ家に帰るだけでまた数時間後には会えるというのに、和花は秀人と別れるのが名残惜しくてたまらない。気づけば「佐伯さん」と呼び止めていた。 「ん?どうした?」 「……あ、えっと、おやすみなさい。また明日」 玄関を開けかけていた秀人はその手を一旦止める。そして和花に一歩近づき小さく名前を呼んだ。 「和花」 秀人の長い指が和花の顎をすくい、あっと息つく暇もなく軽く唇が触れる。 初めてのキスは身体中の血液を一気に巡らせた。 「おやすみ」 唇が離れると同時に秀人が甘い声で囁く。 そして何事もなかったかのように出ていき、玄関がパタンと閉まった。 和花はあまりの衝撃にしばらく顔を真っ赤にしたままその場に固まっていた。 (これが俗にいう顎クイ……) などとどうでもいいことを考える。 幸せで蕩けすぎて語彙力がなくなったのだった。
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