甘い時間

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駅前にあるしっぽりとした創作居酒屋は美味しい香りが店内に広がっていて仕事帰りの二人は食欲をそそられた。 「まずは乾杯しよう。今日も一日お疲れ様」 「はい、お疲れ様です」 ビールジョッキをカツンと当てて、今日一日を労う。冷えたビールはじわりと体に染みていき心地よい酔いを誘ってくる。お通しを口にすれば優しい味わいが口いっぱいに広がった。 「今日は食べて飲んで、喋りまくろう!さ、和花ちゃんの思いの丈を聞こうではないか」 なぎさはさっそくビールをおかわりし、和花もつられてゴクゴクと喉を潤わせた。躊躇いがちだった言葉はアルコールの力も手伝って赤裸々になっていく。 「私、恋愛の仕方がわからなくて不安になってしまうんです。佐伯さんクールだから何考えてるかわからないし。それに他の女の人と親しげにしゃべってるのを見たら、よくわからないけどモヤモヤしてしまって。ただ楽しくしゃべってただけなのに……」 「おー、嫉妬してるね」 「嫉妬なんですか?」 「恋してる証拠じゃん。確かに佐伯くんは感情が乏しいけど、和花ちゃんの前でもそうなの?」 和花は力なく頷く。 「……私に魅力がないんでしょうか?」 「魅力的すぎるけどねぇ」 同じ女性から見ても可愛らしくて護ってあげたくなるタイプの和花だ。魅力がないなんてことは絶対にないと言い切れる。それに、なぎさから見て秀人は和花にベタ惚れだ。それなのに和花が不安に思うなんて、秀人が言葉足らずなのだろうと容易に想像できた。
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