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秀人はわざとらしい咳払いをしてから、突然和花の肩を抱いて引き寄せる。突然のことに和花は「きゃっ」と小さく悲鳴を上げ、おずおずと秀人を見上げた。当の秀人は凛々しい表情で和花を見るとふと甘い眼差しになる。そして前を見据えると高らかに宣言した。
「皆さん、覚えておいてください。僕が彼女にベタ惚れなんです」
「!!!」
とたん、チーム員の声にならない悲鳴と、更に真っ赤になる和花が口をパクパクとさせた。
「和花、僕は和花が思っているよりも和花のことが好きだよ」
ぎゅんと心を掴まれて痺れそうになった。
秀人の熱い想いはしっかりと和花の心に届き、同時にチーム内にも漏れなく伝わっていく。
「……チーム長かっこいい」
高柳が乙女のように目をキラキラさせながら呟き、他の女性社員達もうんうんと頷く。和花だけでなく、チーム員全員が秀人に惚れた瞬間だった。
「あ~おめでたいことだわぁ。ラミネートの機械借りていきまーす」
なぎさはニヨニヨとした笑いが止められず、後でグループメッセージで広めようと企みながらそっとその場を去った。
おかげでその日は盛り上がりすぎて、全くといっていいほど仕事にならない一日となったのだった。
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