3人が本棚に入れています
本棚に追加
シアター
silencio… silencio…
ここにお集まりの紳士淑女の皆様。
今宵お目にかけますのは、
世にも可笑しく不思議な物語でございます……
第二次世界大戦も終わり、混沌としていた昭和の時に
わたくしは、とある実業家のかたのお屋敷で、
下足番をしておりましたときの話でございます。
そこのお宅には3人のご子息がいらっしゃいました。長男の明人様、次男の成人様そして、三男の君人様とおっしゃいました。
こちらのおうちは、貿易業を営まれて大変裕福な生活をしてらっしゃいましたが、
3人のお父様にあたる当主の成章様は、大変放蕩が
過ぎるお方で、そのせいで奥様が愛想を尽かして
出ていかれてしまいました。
その時、明人様22、成人様18、君人様13。
明人様にいたっては、すでにお父様の稼業の手伝いをされ、成人様ももうすぐ二十歳。母恋しい年齢では、ありませんでしたが、三男の君人様だけが、なんとも不憫でお可哀想でした。
このお屋敷には、1つ守らなければいけないルールがございました。夜の11時以降、使用人は、母屋の二階に上がってはいけないというもの。二階は、三人のご子息の自室があり、その他二部屋が空き部屋になっておりました。一階はお父様の成章様のお部屋とリビングダイニング、客間が3部屋。
使用人の部屋は別棟で、基本的には、だいたいの仕事の終わる9時頃にはみな母屋から引き上げして、この別棟の自室で思い思いに過ごすのが慣例となっておりました。
しかし、ある時母屋で夜遅い来客があり、仕事が11時を廻ってしまった時がございました。
もちろん二階には、あがらないように注意をしていたのですが、
「きゃッッははははぁぁぁ」
と二階の空き部屋のほうから、幼女のようなはしゃいだ声が聞こえてくるではありませんか。
もしや、お客さまのお連れにお子さまが居たのでは?
と心配になり、恐る恐る二階の空き部屋を確認にいきまたした。ドアの前で
「どなたか、いらっしゃいますか?」
と声掛けをしてもなんの返答もありません。
トントンとノックをし、ドアを開けると中は、真っ暗で、どなたもいらっしゃいませんでした。
電気をつけてみると、そこには、ゴザがひかれ、椿のついたカンザシと、漆塗りの小さい食器が何個か散らばっておりました。おままごとの道具のようですが、
そんなものを使う人間はこの屋敷にはいません。
不思議に思いながら、しかし入ってはいけない
時間帯にお部屋に入ったことを咎められるのが、恐く
そのことは、誰にも話さずにその日は終えました。
最初のコメントを投稿しよう!