シアター

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そんな不思議なことは、日々の忙しさですっかり忘れ 去り、1~2年経ったある時 母屋で、夜遅くに明人様の高等学校時代のご友人が何名かが、訪ねていらっしゃいました。 そのなかには、一際目立つ方がお一人。 高輪 晴仁様。 代々医師の家系で、ご本人も現在医大に通われてる学生さんでいらっしゃいました。 この方は、何しろ見た目の麗しさが群を抜いておりました。 その鼻梁の高さ際立つ鼻と、大きな瞳は、きれいな睫毛が縁取り、肉厚の唇に絶えず微笑湛えながら、しかし、女性らしさは皆無で男性らしいお顔立ちで、一人異彩をはなってらっしゃいました。 今日はたまたま、いつも給仕をするものが、お休みをしていて、下足番の私が皆様のお酒の準備をしてお持ちすることになりました。 氷や、グラス、酒瓶諸々をワゴンに乗せ、ドアをノックしたら、明人さまがドアを開けて 「そこに置いといてくれれば後は、こちらでやるから、もう下がってくれて構わないよ」 とおっしゃって下さったので、ではわたくしは、これで失礼させていただきます。と言ってドアをしめました。 特に仕事がないなら、別棟に帰ろうと廊下を歩いていると、 「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ」 「では、きょうは、りんごよっつですね?」 「ありがとうござあましたー」 とまたあの幼女の一人遊びの声が二階の空き部屋から聞こえてくるのです。 薄気味悪くも、興味をひかれたわたくしは音を立てないように二階に上がり そして、そっと空き部屋のドアを開けました。 すると、また案の定真っ暗でなにも見えない。 そして、電気をつけると、また同じようにゴザがひかれ、その上には今度はお手玉と、 おはじきが何個か散らばっておりました。
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