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アルフの中であれこれ考えを巡らせている間に、やってきた満月の日。いや、やって来てしまったと言うべきか。
いつものように病室のドアをノックする。
トントントン。
「エリサ、入ってもいいかな?」
しばらく間を置いてエリサが返事をする。
「あら、アルフね。良いわよ。入ってきて。」
アルフが扉を開くと部屋には朝日が満点にみなぎるように降り注いでいた。
「今日もいい天気よ。」とエリサが言う。
「ホントだね。今日は雲ひとつない晴天に恵まれたね。」とアルフが言う。
それが2人の間ではお決まりのセリフだ。
「今日はエリサの体調も良さそうだね。最近はどう?」
「うん。今日はとても体調良いよ。やっぱりお日様が出ていてポカポカだと、心も身体も元気になる感じ。それに満月の日だし。今夜の読み聞かせが楽しみ。」
「わぁ!覚えててくれたんだ。嬉しいなぁ。いやぁでもね、物語が佳境に来てるし嬉しい反面、ハラハラする気持ちが混じってこの数日は複雑な心境だったよ。」
「もちろん。忘れるわけないじゃない。ちゃんとカレンダーに書いておいたから。フフ、やっぱりアルフって面白い人ね。」と言いながらいつものように笑って見せた。
「正直なところ、ハラハラ度合いの方が大きかったかな。この続きを聞きたいような、聞きたくないような。聞かない方が良いような、でも聞いた方が良いような。」
「結局のところは聞きたい方が優勢って事で良いかしら?この物語の続きは私だけが知っているから、何だかアルフが可哀想に見えてきた。」
「ちょっとやめてよー。エリサってば、こんな時に僕をいじめるなんて。まぁそういう所もエリサらしいと言えばエリサらしいんだけどね。」
そのあとしばらくの時が流れた。そしてエリサはゆっくりと話し始めた。
「ねぇアルフ。ちょっと聞いて欲しいことがあるだけどね。良いかな?」
「いいよ。聞いて欲しい事ってなんだろう?」と冷静に見えるアルフだったが心の中ではハラハラが止まらなかった。
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