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「うん。今夜この物語の続きの読み聞かせをする訳だけど。もしもね...私の身に何かが起こってしまっても、この物語の続きをアルフ1人で読んで欲しいの。ここのところ体調がいまいち思わしくないし、それが日に日に悪化している気がする。それはアルフにも分かってたはず。私の最後のお願い聞いてくれるかな?」
エリサは真剣な眼差しでアルフ一点をじっと見つめて言った。
そして静かに頷くアルフ。しばらくの間、何も言葉が出てこなかった。分かってはいた事だったんだけど、いざその真実を聞かされるとどうしようもない感情が溢れ出てきた。
「エリサ、ごめんね。黙っちゃって。でも最後なんて言わないで。今はこうして元気に生きてるじゃない。だから嘘でもいいから、今回もいつものお願いって事にしといてよ。そうじゃなきゃ、僕だって辛くなる。」
そう言うと頬には一筋の涙が伝っていた。アルフがこんな風に取り乱すのは初めての事だった。
「アルフ、私の方こそごめん。でもアルフにだけは嘘を付けない。付きたくなかった。冗談でもアルフにだけは嘘は付けない。だから最後まで話を聞いて。」
そう言うと枕元に置いてあったレースのハンカチをそっとアルフに渡した。そのハンカチには赤い薔薇の刺繍が施してある。
エリサは真っ直ぐな曇りひとつないブルーの瞳でアルフを見つめ、そしていつもの様に笑顔を見せた。
「ハンカチありがとう。やっぱりエリサの笑顔は素敵だね。いつ見ても曇り一点も見つからない。その笑顔に何度救われてきた事か。」渡されたハンカチで涙を拭いながら、次第にいつもの表情に戻りつつあった。
「少しは落ち着いた?アルフったら突然泣き出すんだもの。びっくりしちゃったわよ。」
「本当にごめん。自分でも分かってはいた事だったのに、いざその話を聞かされるとね。流石に参るよ。自分でも知らない間に泣いてた。感情がコントロール出来なくなったんだ。」
「じゃあさっきの続きからね。」
「ああ、もう心の準備は出来たから。話してみて」
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