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エリサは一呼吸置いてから、ゆっくりと話し始めた。
「私が書いたこの小説をいつか私のお母さんの元に届けて欲しいの。まだお母さんには一度も会ったことはないんだけど、アルフの力で探して欲しい」
エリサはいつになく真剣な表情をしていた。そしてその真っ直ぐ済んだ瞳で、力強く語りかけていた。
それに答えるようにアルフも真剣な面持ちで、ゆっくりと返事をした。
「分かったよ。自分の力じゃ何ともならないかもしれないけど、あらゆる手段を使ってでも、エリサのお母さんを探し出してみせる。エリサの頼みなら断る訳にはいかない。僕もエリサのお母さんに会ってみたいしね」
「ありがとう、アルフ。こんなお願いアルフくらいしか頼める人は居ないから。私もまだ会ったことのないお母さん、どんな人なのか気になるなぁ」
「きっと生きているうちに会えるよ。僕がその小説を渡すまでもないかもね」
「ふふふ、アルフったら。でもありがとう。それまでには小説も完結させないとね」
「うん。楽しみにしてる。それよりもさぁ、小説の続きが気になって気になってしょうがないんだけど」
「ごめんごめん。私の話が長引いちゃったね。じゃあ小説の読み聞かせを始めましょ。今日もアルフにお願いね」
「うん。責任重大だけど、続きから読ませて頂くね」
エリサからアルフへ小説が書いてあるノートが手渡されると、栞を挟んでいたページをめくり、アルフはゆっくりと拝読を始めた。
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