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プロローグ
ここは、プロイド帝国。超大国であり、帝国の太陽こと、ジョン17世が治めている。そんな彼には二人の息子がいる。
第一皇子はレオン。ジョン17世の側室、マリナ皇妃が産んだ子である。非常に聡明なお方である。
第二皇子はアラン。ジョン17世の正室、フェリシア皇后が産んだ子である武芸に優れたお方である。
さて、この国では皇太子を、皇子の中から選挙で選ぶのが慣わしである。ジョン17世も、父ジョン16世の五男であり、かつ母親の身分は低かった。しかし、国民人気が非常に高く、兄達を差し置いて皇太子に選ばれたのだ。
よって、フェリシア皇后も、マリナ皇妃も、自分の息子を皇太子にしようと火花を散らしている。
その一方。この兄弟は別の意味で火花を散らしているのである……。
「絶対嫌です! 兄上が是非皇太子になって下さいませ! 僕は絶対になりません!」
アランは兄レオンの胸ぐらを掴んで叫ぶ。レオンも負けじと叫ぶ。
「私だって嫌だよ! 皇太子なんて!! 父上の正室、フェリシア皇后陛下の息子である君がなればいいじゃないか! 庶子である私には分不相応さ。」
なんと二人とも絶対に皇太子にはなりたくなかったのだ。その理由は……。
「「あんなブラックな環境、たまったもんじゃねえ!!!」」
……だそうだ。
そう、プロイド帝国の皇帝の任務は膨大である。どれだけ官僚を雇っても、皇帝にしかできない仕事がわんさかあるので、結局皇帝は年から年中働き詰めなのである。そのせいで、歴代皇帝は平均3時間しか睡眠時間を取れなかったそうだ。ジョン17世も例外ではなく、ストレスが原因で、三十代の頃から既に髪が薄くなっていた。
そんな父親を見ている二人は、絶対に皇太子になってなるものかと固く決心しており、日々こんな風に皇太子の座を押しつけあっているのである。
「正室の子とか側室の子とか関係ないですから! 父上なんて母親の身分どんだけ低いと思っているんですか! 平民ですよ、平民!! なので、兄上が皇太子になっても全く差し障りありません! というより、むしろ年功序列で兄上がなるべきです!」
「何言ってんだ。父上は五男だぞ? 年功序列なんて時代遅れ甚だしい。是非、若い君がなってくれ。私は絶対にならん。」
その日も数時間ほど喧嘩が続いた後、うんざりしたアランがレオンに言い放った。
「毎日毎日同じ議論ばかりでもううんざりです! 分かりました!! どうせ国民が皇太子を決めるんですから、僕、これからは兄上の評判を爆上げできるように頑張りますから!」
「はあ? そんなこと言うなら、私も同じ事をしてやる! どんな手を使ってでも、お前の評判を上げてやるからな! 覚悟しろ、アラン!」
そうして、この兄弟は、互いを皇太子に据えるための仁義なき争いを始めたのであった……。
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