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「レオン、貴方は皇帝になるために生まれてきたのですよ。なんてったって陛下の第一子なのですから。」
マリナ皇妃は口癖のように、幼いレオンに度々そう言い聞かせていた。
「母上。僕は、研究者になりたいのですが……。古代文学を研究して、昔の人々がどのような価値観を持っていたか、どのような生活をしていたか、知りたいのです。」
七歳の頃にレオンは一度、母親に将来の夢を打ち明けたことがある。しかし、それを聞いた途端、マリナ皇妃は顔色を変えて怒鳴った。
「何を言っているの!! 貴方は皇帝になる運命だって、何回も言ってるでしょ!! 二度とそんな馬鹿なことを言わないで!!」
(母上は、どうしてそんなに僕に皇帝になってほしいんだろう?)
その時は分からなかったが、今のレオンには母の気持ちがよく理解できた。
(母上は自分が皇太后になりたくてなりたくてたまらないんだ。そのためには、私を皇帝に据えないといけないから……。)
皇帝の実母は、その身分に関わらず、皇太后という称号が与えられる。もし、マリナ皇妃が皇太后となれば、フェリシア皇后と立場的には同格になるのだ。いや、勢力面を考えると、皇太后の方が強いかもしれない。
(母上は元々、出世欲が非常に強いからなあ。しかし、そんな理由で私が犠牲になるのはたまったもんじゃない。)
母の希望を叶えるためだけに、幼い頃からの夢を諦め、挙げ句の果てに過酷な環境に放り込まれるなど、レオンは到底受け入れることができなかった。
(母上の思う通りにはさせない……!)
レオンは改めて固く決意するのであった。
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