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アランの作戦2
「一体どうなってんだよおお!!!!」
アランの叫び声が響き渡る。
「なんで僕の評判が上がってるんだ!!!」
賠償金を稼ぎ終え、漆黒宮から出たアランは、自分の評判がどれだけ下がっているかを探りに、視察という名目で街に繰り出した。すると、街に出るや否や多くの市民に取り囲まれた。
「何をしている! そこをどかないか!!」
「アラン殿下のお通りだぞ!!」
慌てて彼等を追い払おうとする護衛達をアランは制す。
「君達。僕に言いたいことがあるの? いいよ、何でも言って。」
(さあ、僕を存分に罵るがいい!!!)
だがしかし。
「「「殿下……。おいたわしゅうございます……!」」」
「は?」
彼等の発言は、アランにとって予想だにしないものだった。
「え、どうして僕がおいたわしいの?」
「だって! あんなにマリナ皇妃に酷い事をされてきたのに……。」
「それにも関わらず、御自身を犠牲にしてまで彼女をお守りになるなんて……!」
「ほら! こちらに全て書いてあります! 私、殿下のような心の清い方に初めて出会いました!」
そのうちの一人に手渡された新聞をみて、アランは度肝を抜かれた。乱闘事件が超絶美談化されていたからである。
そして、これを見た市民達はアランに深く同情し、彼がどこへいっても群がり、熱烈な声援を送った。よって、宮殿に帰る頃には、アランは魂の抜けたような顔になっていた。
「三週間も漆黒宮に行って、チマチマチマチマと軽作業を一生懸命頑張ってきたのに……。その結果がこれ!? 酷すぎない? マリナ皇妃の評判も上がらないどころか、落ちちゃってるし!!」
新聞を投げ捨てて嘆くアラン。しかし、この新聞が兄レオンが裏から手を回して作成された物だということには、まだ気がついていないようだ……。
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