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キーン、カンカンカン。剣が激しくぶつかる音が響き渡る。
(ああ、剣を振るうのは久しぶりだ。楽しい!)
アランは楽しみながら対戦していたが、ジェームズ中将にはそんな余裕は全くなかった。
(なんで三週間も鍛錬してないのに、殿下は前よりも強くなってるんだ……。)
規格外の強さに、すっかり圧倒されてしまった。そして、ついに彼の喉元にアランの剣が突きつけられた。
「……まいりました。」
ジェームズ中将は悔しそうに頭を下げる。
「いや、かなり腕を上げたね。前回よりも対戦時間が長かった。」
アランが褒めてくれるが、ちっとも嬉しくない。
(それでも殿下には到底及ばないのが悔しい。いつかは必ず……!)
さらに剣術に打ち込むことを決意したジェームズ中将であった。
「ところでジェームズ中将。どういう人が皇太子に望まれるのだろうか?」
アランの突然の問いかけに、彼は面食らったが、言葉を選びながら答える。
「ええと……。国民のためを思い、謙虚に誠実に行動なさる方ではないでしょうか?」
「そうか。逆に、どういう人が皇太子に望まれないと思う?」
「日々遊び歩いておられる方とかではないでしょうか……? 皇帝陛下の業務が膨大なのは、皆知っておりますし……。そのような方に皇帝は任せられないと、国民は考えると思います。」
それを聞いたアランは、良いことを聞いたとばかりにニヤリと笑った。
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