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しかし、そう簡単には上手くいかなかった。アランに対する悪評は、数日の内に沈静化してしまったのだ。
「ん? 昨日まで、かなり僕の悪評が広まっていたのに……。急にどうしたんだ?」
不審に思ったアランは、鍛錬の際にジェームズ中将にそれとなく尋ねた。すると、彼はあっさりとその理由を教えてくれた。
「ああ……。それは今日、殿下の真意を記した記事が出ましたので……。国民の誤解も無事に解けたのでしょう。」
「僕の真意……? ジェームズ中将、悪いがその記事を取り寄せてくれないか?」
嫌な予感がしたアランが頼むと、ジェームズ中将は快諾してくれた。そして、数時間後には部屋まで新聞が届けられた。
『最近、アラン殿下が夜な夜なクラブに出向いておられる。そして、それが原因で良くない噂が立っているようだが、それは真実ではない。アラン殿下は、視察目的でクラブに出向いておられたのだ。殿下は将来、立派な皇太子になるために、国民感情を直接理解なさろうとした。しかし、それを大っぴらにしてしまうと、国民が遠慮してしまい、正しい事が理解できないのではと懸念なさった。だからこそ、国民の飾らぬ感情を知るためにあえて客としてクラブに出かけられたのだ。』
アランが毎晩遊び歩いていたことが、またもや美談にされてしまった。ちょっと無理やりではあるが……。
「またか……。どこのどいつが書いてるか知らんが、二度も邪魔してくれおって……。」
アランはがっくりとうなだれる。しかし、アランにとっての悲劇は、これだけでは終わらなかった。
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