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「ば、買収ですか……。」
「ああ。聞くところによると、フラン王国は数年前に大飢饉に苦しんだらしい。そしてそれに伴い、多額の借金を抱えた貴族も多いと聞く。だから、案外こちらの頼みを引き受けてくれるんじゃないかな。」
レオンは一枚の紙切れをパリス伯爵に渡した。
「これは……?」
「買収する相手の条件だよ。誰にも迷惑をかけないためにも、これは遵守して。」
パリス伯爵は、冷や汗をかきながら読み始めた。そして、そんな彼の姿をみたフェリシア皇后が、興味津々で尋ねる。
「一体なんて書いてあるのかしら?」
「ええと……。その一、家計に困窮した貴族を狙うこと。その二、フラン王国の国王と、折り合いの悪い貴族にすること。その三、レオン殿下と同年代の令嬢がいる家にすること。その四、必ず大神殿で誓約書を書かせること。その五……」
全部で十二箇条ほどあった。今回の件は、選ぶ相手を間違えると、外交問題に発展してしまう。よって、レオンの要求も細かくならざるをえなかった。
「ごめん、パリス伯爵。大変な任務を任せてしまって……。」
「……いえ、大丈夫です。このパリス、何としてでもこの条件に見合う貴族を探してきます!」
「ありがとう。君しかできない仕事だから、頑張ってね。」
顔色が青から白に変わってしまったパリス伯爵を見て、レオンは少し罪悪感を覚えた。しかし、覚悟を決めた彼は、真剣な面持ちで、完璧に任務遂行することを誓った。
「私からも心からお願いするわ。今回の件にかかる費用は、私の実家から全額だすから、金銭面の事は何も気にせずに任務にあたって下さいな。」
こうして、二人から激励をもらったパリス伯爵は、翌日にはフラン王国に旅立っていった。
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