レオンの作戦2

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レオンの作戦2

「第一皇子ね、いらっしゃい。この前、私が出した宿題は終わったのかしら?」  アランが居酒屋で暴れてから数日後。フェリシア皇后は、面会に訪れたレオンを出迎えたものの、どことなく疲れ果てているようだった。 「ええ、もちろんです。謹んでこちらを献上致します。」  レオンは、大神殿で作成した誓約書をフェリシア皇后に差し出した。この国では、誓いを立てる時には、大神殿で誓約書を作成するのが慣わしである。万が一その誓いを破った時には、それに記載した担保がすぐさま差し押さえられてしまう、という強力な物だ。フェリシア皇后は、レオンを信頼する条件として、誓約書の提出を求めていたのだ。 「あらまあ。思い切った内容にしたわね。本当に良いのかしら?」  フェリシア皇后が驚いたのも無理はない。誓約書には次のように書かれてあったのである。 『私、第一皇子レオンはアランを皇太子に据えるために、フェリシア皇后陛下に全面的に協力することをここに誓います。万が一誓いを破った場合には、私の全財産を皇后陛下とアランに捧げることをお約束致します。』  しかし、レオンはこれが強力な誓いだとは全く思っていなかった。自分がフェリシア皇后を裏切ることなど、天地がひっくり返ってもあり得なかったからである。 「ええ。大丈夫です。私が陛下を裏切るなど、あり得ませんから。」 「そう? ……まあいいわ。誓約書を提出してもらった以上、交渉成立よ。これから宜しく頼むわね。」  フェリシア皇后はレオンとがっちり握手を交わした。そしてこの瞬間、本来政敵同士である二人の同盟が誕生したのであった。
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