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「でもねえ……。せっかく貴方が協力してくれるっていうのに…。うちの馬鹿息子がとんでもないことをしでかしてしまって……。」
フェリシア皇后は深い溜息をつく。
「アランが何をやらかしたんですか?」
「……ちょうど貴方が大神殿に行っている頃よ。あの子ったら、一人で下町の居酒屋に出向いた挙げ句、そこで大暴れしたの。『マリナ皇妃は素晴らしい方だ!』って叫びながら…。」
(あの野郎……。母上の人気が皆無なのが、私の弱みだったのに……。それを潰すようなことをしやがって……。)
アランの作戦だと気づいたレオンは、腸が煮えくりかえりそうなのを必死で堪えていた。顔には全く出さないが。
「それは困りましたね……。アランは今どこにいるんですか?」
「漆黒宮よ。皇帝陛下が大層お怒りになってね。『働いて全額弁償しろ!』とおっしゃったのよ……。出られるまで三週間ほどかかるんじゃないかしら?」
漆黒宮。それは、罪を犯した皇族が収容される宮殿だ。アランはその一室に閉じ込められて、弁償費用を賄うために現在せっせと軽作業に励んでいる。
「……。」
「どうしたらいいのかしら……。漆黒宮に閉じ込められたことのある皇太子って今までいないのに……。」
フェリシア皇后はすっかり憔悴してしまっている。しかし、その一方、神童皇子と異名を持つレオンは、早速対応策を考えたようだ。
「陛下。ご心配には及びません。簡単な話です。ピンチをチャンスに変えればいいんです。」
「どういうこと?」
「アランは最低三週間は漆黒宮から出られないんですよね?」
「ええ、そうよ。」
「でしたらその間に、アランの評判をうなぎ登りにしてしまいましょう。三週間もあれば余裕です。」
「そんな事出来るの?」
「ええ、可能です。」
レオンは安心させるように、フェリシア皇后に微笑みかけた。
「新聞社を作りましょう。」
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