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漆黒宮の中のアラン
「アラン殿下。次はこちらです。この酒瓶にラベルを貼って下さいませ。」
漆黒宮に閉じ込められたアランのお目付役兼世話役の男が、大量の酒瓶とラベルを持って、彼のいる部屋に入ってきた。
「了解~!」
(一本くすねて飲んじゃおうっかなあ……。)
良からぬ考えを抱きながら返事をしたアランだったが……。
「……殿下。酒瓶の数は全て記録していますので、くれぐれもこっそり飲もうなどと考えないで下さい。」
「……はい。」
考えを見抜いたお目付役に、釘を刺されてしまった。
「それでは、作業が終わりましたら、そちらの呼び鈴で私をお呼び下さいませ。」
お目付役は、しぶしぶ作業を始めたアランを確認した後、部屋を出た。
「はあ……。こんなチマチマした作業なんて性に合わないよ。重労働の方がよっぽどマシ。身体動かせるし。」
アランは作業をしながら、ぶつくさ文句を言っている。
「まあ、父上はわざと軽作業をよこしてきたんだろうけど。……あの時の父上は恐かったからなあ。」
乱闘事件の後の事を思い返したアランは、思わず身震いする。警察に連れられて宮殿に帰ると、茹で蛸のように顔を真っ赤にした父ジョン17世が、仁王立ちで彼を待ち構えていた。
「アラン!! お前は何てことをしてくれた!! 皇子として、そして皇太子候補として、国民の為に尽くさねばならないと、常日頃から言っておろう!! それなのに、あろうことか人様に迷惑をかけるなんて!!」
ジョン17世の剣幕に、アランもそうだが、その場にいた全ての人々が震え上がってしまった。
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