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「そういえば、さっき麓の村で、オマエのうちわによく似たのを持っている子がおったような」
「本当か? だったらそこに案内してくれよ」
「かまいやしないよ。だが子供らはとっくに家に帰ってしまったんじゃねえか?」
「それでもいいさ。家は大体覚えてる、もしアイツらが盗ったってんなら、オイラとっちめてやるさ」
「ならば付いて来れるか、三郎太」
言うなり八咫烏は、真っ黒な翼でバッサバッサと羽ばたいた。
「なんのなんの、八咫烏こそオイラに追い抜かれるんじゃないぞ」
三郎太は、コロコロと神社の石段を駆け降り。
風の子のように森を突っ切って、河原石をピョンピョンと飛び越えました。
八咫烏は三郎太を見失わないように付かず離れず子供を見かけた場所へと導きます。
村に二人が辿り着いた時には、空には一番星が光っていました。
薄明りの漏れる藁ぶき屋根の家々からは、夕げの支度が整ったのかいい匂いが漂っています。
三郎太の真っ赤な長い鼻も、それを捉えて。
(そういえば、お腹が空いたな。母様は、夕げをこさえて待ってるだろうか)
グウウと大きくお腹が鳴って、同時に寂しくなってしまいました。
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