『違う景色が見たかった』

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寝る支度を済ませ、ベッドに横になった。 いつもならすぐに眠くなるのに、その日は少しも眠くならなかった。 頭を使いすぎたせいかもしれない。 創作のおかげで、脳が覚醒してしまったようだ。 僕は、スマホを取り出し、眠くなるまで月の石賞のエントリー作品を見ることにした。 (わぁ、けっこう増えてるな。) エントリー期間から二か月程経ったせいか、もう100作を超える作品がエントリーされていた。 さすがは人気のコンテストだ。 良く見かける名前の作家陣は投稿するのも早い。 しかも、中にはすでに三作も出している人もいた。 よくそんなに早く書けるものだ。 僕も、時間さえあればもっと書けるのだが、悲しいかな…社会人の身では、そんなに自由な時間はない。 もう三十路を超えたというのに実家暮らしをしているのには、そういう理由もある。 実家にいれば、家事をする必要がない。 部屋の掃除も洗濯も炊事も、すべて母さんがやってくれる。 仕事から帰ったら、美味しい夕飯が待っている。 両親と三人で他愛ない話をしながら夕飯を済ませ、風呂に入る。 あとは、仕事があるからと嘘を吐いて部屋に閉じ籠り、小説を打ち込む。 風呂を済ませてから寝るまでの時間は、貴重な創作時間だ。 これが、一人暮らしだったらそうはいかない。 様々な雑用に時間と体力を取られてしまう。 だから、僕は当分家を出る予定はない。 両親にはたまにいやみを言われるものの、何も追い出されるわけじゃない。 その程度なら十分我慢出来る。 小説家になるまで、僕は家を出ないつもりだ。 それにしても、三作も書いている人はどういう生活をしてるんだろう? 執筆時間をどうやって捻出しているのだろう? そんなことを考えながら、僕はエントリー作品を見ていた。
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