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『違う景色が見たかった』
そのタイトルを目にしただけで、背筋がぞっとした。
内容が全く予想出来ないタイトルだ。
僕も、今回はタイトルから内容を悟られないようにと思い、内容がわからず、それでいてストーリにはマッチしていて、読み終えた時に「なるほど…!」と思ってもらえるタイトルを付けたいと思っていた。
だけど、それがなかなか思い付かずに、タイトルはまだ未定のままだったというのに、このタイトルは、まさに僕の書いているものにぴったりなのだ。
僕は、深呼吸をして自分を落ち着かせ、そして、ページを開いた。
少し読んだだけで、僕はジェラシーのようなものを感じた。
なんともなめらかで読みやすく、テンポの良い文章だ。
1ページ読んだだけで、僕は敗北感のようなものを感じた。
名前は全く知らない人だけど、相当書き慣れた実力者だと思った。
読み進めるうちに、僕は鼓動が速まるのを感じた。
それは、その小説が面白いからではない。
いや、面白いのは面白いのだけど…
僕がドキドキしたのは、それが僕の考えたストーリーだったからだ。
大胆なことに、登場人物の名前や地名さえそのまんま使ってある。
そう…『違う景色が見たかった』は、まさに僕が今書いている、僕の小説だったのだ。
つまり、それは盗作だ。
でも、誰が…?どうやって?
僕は、起き上がり、テーブルに置いてあったペットボトルのお茶をごくりと流し込んだ。
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